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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)16号 判決 1984年11月30日

大阪市旭区新森二丁目二番一号

控訴人

内外興産株式会社

右代表者代表取締役

中山象一

右訴訟代理人弁護士

平正博

大阪市旭区大宮一丁目一番二五号

被控訴人

旭税務署長

奥野辰三

右訴訟代理人弁護士

森勝治

右指定代理人

笠原嘉人

杉山幸雄

堤孝雄

西浜温夫

辻田孝章

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和四九年一二月二六日付でした控訴人の昭和四六年五月一日から昭和四七年四月三〇日までの事業年度及び昭和四七年五月一日から昭和四八年四月三〇日までの事業年度の法人税についての更正処分及び重加算税賦課決定処分を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり訂正、削除、付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

一  控訴人

1  原判決添付別表(一)の第二期及び第三期に関する各裁決の年月日欄中の年「50」をいずれも「53」と改める。

2  原判決八枚目表一〇、一一行目の「の第二期欄」を削り。同一一行目の「但し、」の後に「第二期欄」を、同一二行目の「である」の後に「。また、第三期欄昭和四七年九月一八日の四、四六八万七、七三五円及び昭和四八年二月二日の五七〇万円は受領していない。なお、第三期中に別に八七万九、三四四円を受領している」をそれぞれ加える。

3  同枚目裏一行目の「1、」を「番号」と改め、同二行目の「合計額」の後に「であり、同欄番号13の一、八〇〇万円の支払年月日は昭和四七年一月三一日」を加え、同三行目の「番号3」から同四行目の「であり、」までを削り、同七行目の「支払金額」から同九行目の「がある」までを「二五〇万一、〇七〇円の支払の事実はない」と改める。

4  同枚目裏一〇行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「なお、原告会社は、第三期経過後において、別表(四)番号3につき昭和五二年七月一八日に二六五万円を、同番号5につき昭和四九年三月に七〇〇万円及び五〇〇万円を、同番号13につき昭和四八年一〇月一三日に三〇〇万円、昭和五一年六月一〇日に五〇万円をそれぞれ支払っている。同番号4につき支払った二、四〇七万八、九三五円は売買契約の実測精算条項に基づく精算金として、同じく二五〇万一、〇七〇円は右金員の支払遅滞による金利としてそれぞれ支払った。また、同番号3の二六五万円、同番号5の七〇〇万円及び五〇〇万円、同番号13の三〇〇万円及び五〇万円はいずれも売買契約書を取交すに当り合意した契約書外の約定に基づいて支払った。」

ちなみに、原告会社の主張する地主に対する各支払金を整理して記載すれば、本判決(以下「控訴審判決」という。」添付の別紙土地売買一覧表のとおりである。

5  原判決一〇枚目一行目の「金員」の前に「前記」を、同行目の「土地買収」の後に「等」を、同三行目の「であって、」の後に「交付を受けた時点において」をそれぞれ加え、同四行目の「所得」を「収入」と、同五行目の「なお」を「のみならず」とそれぞれ改め、同一二行目の「買付」を削る。

6  同枚目裏一三行目の「明宝広告」から原判決一一枚目表五行目の「ものではない。」までを次のとおり改める。

「原告会社が各地主との間に売買契約を締結したというだけで依頼された業務を完了したということはできないのである。従って原告会社が明宝広告から交付を受けた前記金員は交付を受けた時点で原告会社の確定的な収入となるのではなく、また、原告会社が各地主に対して支払った前記金員が支払いの時点で原価として確定するものでもない。このことは、本件各土地の中には農地があり、農地については知事の許可を待ってはじめて売買契約の効力が生ずることからも明確であろう。」

7  原判決一一枚目表五行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「仮に土地買収資金として交付を受けた金員が交付を受けた時点で原告会社の収入となるとしても、原告会社が明宝広告から交付を受けた前記金員中には交付を受けた時点で原告会社の収入として計上できない付帯義務履行のための費用が含まれているから、右金員全額を交付を受けた時点における原告会社の収入金とすることはできない。」

8  同枚目表六行目の「原告会社が」の後に「自己の危険と計算において各地主から本件各土地を買上げこれを明宝広告に転売したもので、原告会社が」を加える。

9  同枚目表八行目の「及び」から同一一行目の「である」までを次のとおり改める。

「に対し売買代金として支払った控訴審判決添付の別紙土地売買一覧表記載の各支払金の全部及び近隣住民等に対し支払った同別紙支払手数料、経費一覧表記載の各支払金の全部が原告会社の係争年度の所得の算定上仕入原価ないし費用として右収入金から控除されるべきである(なお、右各支払金のうち第三期以降に支払われたものも、すべて第二期における同別紙土地売買一覧表記載の各売買契約について発生したものであるから、第二期の未払費用として計上されるべきである。)付言するに、同別紙支払手数料、経費一覧表番号2、3の森本義行外一名、林栄司に対する各支払金は明宝広告が支払うべき売買代金についての遅延損害金を原告会社が明宝広告から交付を受けた前記金員の中から支出したものであり、同番号1、5の中村治郎、足立万治郎に対する各支払金も同様に右金員の中から支出したものであるから、右金員がすべて原告会社の収入金になるというのであれば、右金員の中から不動産取引についての費用として支出されたこれらの支払金は等しく原告会社の所得の算定上費用として計上されるべきである。また、同番号4の(株)大誠に対する支払金が第三期より後である昭和四八年六月から同年一〇月までの間に支払われたと認められるとしても、右支払金は前記各不動産売買契約の成約に伴う手数料として支払われたもので、ただその支払時期がたまたま遅れたにすぎないから、遅くとも原告会社の第三期の所得の算定上未払費用として計上されるべきであり、同番号6の森本万二郎に対する支払金も同様の性格のものである。」

二  被控訴人

1  原判決三枚目裏九行目の「別紙(二)の<1>」の後に「、別表(三)の<1>」を加える。

2  同四枚目裏五行目の「岡野武夫」の後に「各所有分及び」を加え、原判決五枚目表四行目の「しかし」を「ところで」と改める。

3  原判決五枚目裏一二行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「原告会社は、さらに後述のように別表(四)番号3につき昭和五二年七月一八日に二六五万円(<1>)を、同番号4につき昭和四七年七月六日に二五〇万一、〇七〇円(<2>)を、同番号5につき昭和四九年三月に七〇〇万円(<3>)及び五〇〇万円(<4>)を、同番号13につき昭和四八年一〇月一三日に三〇〇万円(<5>)、昭和五一年六月一〇日に五〇万円(<6>)をそれぞれ支払った旨主張する(後記三の(二)の1)。しかし、右各金員は、次に述べるように、その支払の事実が認められないか、あるいはこれが認められても係争年度の原価ないし費用としては認められないものである。すなわち、右<1>の金員は昭和五二年七月一八日別途に売買された土地の売買代金等として支払われたもので、右支払時に債務が確定したものであるから、係争年度の原価ないし費用とはならない。右<2>の金員は別表(四)番号11につき支払われたもので、同番号4につき支払われたものとは認められない。右<3>と<4>の各金員についてはその支払の事実は疑問であり、仮にこれが認められるとしても、前記売買契約に基づく売買代金とは認められないから、係争年度の原価ないし費用とはならない。右<5>の金員は前記売買契約に関し内容の異なる二通の契約書を作成したために生じたトラブルの解決金として、また、右<6>の金員は工事補償金としてそれぞれ支払われたものであり、右各金員はいずれも右各支払時に債務が確定したものであるから、係争年度の原価ないし費用とはならない。

また、原告会社は、後述のように、近隣住民等に対し控訴審判決添付の別紙支払手数料、経費一覧表記載の各金員を支払ったから原告会社の係争年度の所得の算定上右各支払金を仕入原価ないし費用として前記収入金から控除すべきである旨主張する(後記三の(二)の2)。右主張の各支払金のうち右一覧表番号7の支払金(但し、その支払年月日は昭和四七年七月一八日である。」は第三期の支払手数料として、同番号8の支払金は第二期の支払手数料として、また、同番号9の支払金は第三期の経費としてそれぞれ各期における所得の算定上収入金から控除すべき費用に当ることは認めるが、その余の各支払金に関する主張は争う。

第三証拠関係

証拠関係は、原審及び当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所も、原判決と同様に、控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり削除、付加、訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決一三枚目裏一行目の「の第二期欄」、同四行目の「1、」、同六行目の「3、」をそれぞれ削り、同一行目の「但し、」の後に「第二期欄」を、同二行目の「限度」の後に「。また、第三期欄昭和四七年九月一八日の四、四六八万七、七三五円及び昭和四八年二月二日の五七〇万円は除く」を、同五行目の「として」の後に「。また、番号13の一、八〇〇万円については支払年月日の点は除く」をそれぞれ加える。

2  同一四枚目表四行目の「に記載のとおりの金員」を「昭和四七年九月一八日支払の四、四六八万七、七三五円及び同昭和四八年二月二日支払の五七〇万円」と改める。

3  同枚目表一三行目の「乙第一一号証」から同枚目裏四行目の「支払ったこと」までを「同号証の一二の六によれば、別表(四)の第二期欄番号13の一、八〇〇万円の支払年月日は昭和四七年二月二日であること及び同第三期欄番号11の昭和四七年七月六日二五〇万一、〇七〇円支払の事実」と改める。

4  同枚目裏五行目の「原告会社」から同九行目の「であり、」までを削り、原判決一五枚目表二行目の「五円は、」の後に「成立に争いのない甲第三六号証及び原告会社代表者の本人尋問の結果中にこれに沿う部分があるが、右は後掲各証拠に照らして措信できず、他に」を、同五行目の「同証言」の後に「、控訴審証人林房治の証言」を、同六行目の「に対し、」の後に「昭和四七年六月六日支払の二、四〇七万八、九三五円に関する」をそれぞれ加える。

5  原判決一五枚目表一一行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「最後に、原告会社の第三期経過後の各支払金に関する主張について判断する。

(1)  別表(四)番号3についての『昭和五二年七月一八日支払の二六五万円』について

原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)とこれにより成立の認められる甲第一六号証の一、二、成立に争いのない乙第一一号証の一並びに弁論の全趣旨によれば、原告会社は第三期経過後別表(一〇)番号<3>の売買にかかる神戸市垂水区下畑町字真田山二七七-三-一の土地及び昭和四七年二月二日ころ追加買収にかかる同所二七七-一二の土地(いずれも後記5の(3)認定の第二次契約にかかるもので、後記5の(5)認定のとおり昭和四七年二月九日ころ原告会社から明宝広告を経て大林組及びトーメンに引渡されている。)が手続上の不注意により登記漏れ(大林組及びトーメンに対する各持分二分の一宛の所有権一部移転登記が未了)となっていることを発見したため売主である佐伯長蔵と交渉のうえ昭和五二年七月一八日右登記手続等に必要な印鑑証明三通の交付を受ける代償として同人に対し二六五万円を支払ったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない(本件裁決がなされたのは同五三年六月二〇)。

(2)  同番号5についての『昭和四九年三月支払の七〇〇万円及び五〇〇万円』について

原告会社がその証拠として提出する原本の存在・成立につき争いのない甲第三一号証の一その他本件全証拠によるも右金員支払の事実を認めるに足りない。

(3)  同番号13についての『昭和四八年一〇月一三日支払の三〇〇万円』及び『昭和五一年六月一〇日支払の五〇万円』について

成立に争いのない甲第九号証の一二の一、甲第一三号証の二、原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)により成立の認められる甲第一八号証の四、控訴審証人鈴木成雄の証言により成立の認められる甲第三二号証、控訴審証人鈴木成雄、同森本一郎の各証言、原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)並びに弁論の全趣旨によれば、原告会社は、森本一郎との間において別表(二)番号<13>の売買契約につき正規の契約書(甲第九号証の一二の一)のほかに売買代金をより高額な金額とする契約書を作成していたことからいずれが本当の売買代金であるかについて紛争を生じ、話合いの結果右代金差額のうち三〇〇万円を支払う旨合意し、昭和四八和一〇月一三日同人に対し右三〇〇万円を支払ったこと及び原告会社は昭和五一年六月一〇日同人に対し大林組及びトーメンの開発行為の結果同人がその所有にかかる神戸市垂水区下畑町二六五-二他三筆の田の耕作をすることができなくなったことに対する補償として五〇万円を支払ったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。」

6  同枚目裏一一行目の「同第三〇号証、」の後に「前掲甲第三六号証(一部)、」を、原判決一六枚目表二行目の「反する」の後に「前掲甲第三六号証の一部及び」をそれぞれ加え、同一五枚目裏一一行目の「春美」を「美春」と改める。

7  原判決一六枚目裏九行目の「締結した」の後に「(なお、同表の<3>、<4>、<5>、<9>、<11>の各売買契約においては、売買代金は一応公簿面積を基準として売買契約書記載のとおり決定するが、後日実測面積に基づいてこれを精算する旨の約定がおかれている。)」を同行目の「各土地」の後に「及び同15の土地の一部」を、同一二行目の「である。」の後に「なお、別表(四)の16の土地は昭和四七年四月一九日、同18の土地は一部分筆のうえ同年二月二日いずれも右(3)記載の各売買契約とは別個に明宝から大林組及びトーメンに売り渡された。」をそれぞれ加える。

8  同一七枚目表六行目の「同表の」の後に「<3>については前記4記載の二筆が登記漏れになっていたほか一部が原告会社に、」を、同七行目の「<15>については」の後に「一部が」を、同八行目の「経由された)。」の後に「なお、別表(四)の3、4、5、9、11の各地主に対しては右(4)記載の実測精算条項に基づいて同表第三期欄記載のとおり追加精算金が支払われた。」をそれぞれ加える。

9  同枚目裏七行目の後に行を改めて次のとおり加える。

「なお、別表(五)の第二期欄記載の各金員は各地主・原告会社間の前記(4)、(5)記載の各売買契約金額に対応する原告会社・明宝広告間の売買代金として、また、同第三期欄記載の追加精算金に対応する原告会社・明宝広告間の追加精算金として支払われた。」

10  原判決一八枚目裏三行目の「昭和四九年五月二〇日の時点で、」を「昭和四七年一二月二七日をもって」と改める。

11  同一九枚目裏七行目の「また、」から同一三行目の「である。」までを次のとおり改める。

「また、原告会社は、原告会社が明宝広告から依頼された業務中には付帯業務が含まれていることを理由に、『原告会社が明宝広告から交付を受けた別表(五)の各金員が交付を受けた時点で原告会社の確定的な収入となるのではなく、また、原告会社が各地主に対して支払った別表(四)の各金員が支払の時点で右収入に対する原価として確定するものでもない。仮にそうでないとしても、別表(四)の各金員中には付帯業務履行のための費用が含まれているから、右金員全額の交付を受けた時点における原告会社の収入金とすることはできない。』旨主張する。しかし、原告会社と明宝広告間の本件各土地に関する取引が売買であり、かつ明宝広告から原告会社に交付された別表(五)の各金員が売買代金であると認められることは前記説示及び5の(7)認定のとおりであるから、仮に原告会社が明宝広告に対し付帯義務を負っているとしても、右事実は、後記7説示のように別表(五)の各金員が原告会社の係争年度の収入金となり、これに対応する別表(四)の各金員がその原価となると認めることにつき何ら妨げとなるものでない。」

12  同二〇枚目表二行目の「別表(五)」から同二一枚目表五行目の「である。」までを次のとおり改める。

「以上認定説示の事実によれば、別表(五)の第二期欄記載の各金員は資産の販売による譲渡益として原告会社の第二期の益金に、別表(四)の第二期欄記載の各金員、前記4認定の同表3についての昭和五二年七月一八日支払の二六五万円及び同表13についての昭和四八年一〇月一三日支払の三〇〇万円はいずれも右収益に対応する費用すなわち売上原価として原告会社の第二期の損金にそれぞれ計上すべきである(なお、前記4認定の昭和五一年六月一〇日支払の五〇万円は第二期の右収益及び第三期の後記収益のいずれに対しても売上原価になるとは認められず、本件全証拠によるも係争年度中にその支払義務が確定したことを認めるに足りないから、係争年度の損金とはならない。)。また、別表(五)の第三期欄記載の各金員は、前記5の(5)、(7)認定のとおり、第二期に売買契約が締結され、かつ引渡等のされた本件各土地の売買代金であるが、第二期においていまだその支払義務が具体的に確定せず第三期に至ってはじめてこれが確定したのであり、しかも、前記5の(8)認定のとおり、原告会社自身これを第三期の収益と認めて会計処理をしているのであるから、これを資産の販売による譲渡益として第三期の益金に計上するのが相当であり、そして、右収益に対応する別表(四)の第三期欄記載の各金員を原告会社の第三期の損金に計上すべきである。」

13  同二一枚目表六行目の「なお、」から同枚目裏一行目の「ない。」までを次のとおり改める。

「原告会社は『控訴審判決添付の別紙支払手数料、経費一覧表記載の各支払金は、原告会社の係争年度の所得の算定上、仕入原価ないし費用として前記収入金から控除されるべきである。』旨主張するので、以下この点について判断する。

(1)  同表1について

前掲甲第三六号証(一部)、原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)とこれにより成立の認められる甲第一五号証の一によれば、原告会社は、本件各土地の買収にあたり被買収地の一部につき利害関係を有していた隣地所有者の中村治郎から右利害関係に基づく要求をしないことの代償として、昭和五二年七月八日に三〇〇万円を同人に支払ったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、右三〇〇万円は原告会社が右被買収地を取得するために支出した金員として原告会社の第二期の収益に対応する売上原価となると認めるのが相当である。

(2)  同表2、3について

原告会社がその証拠として提出する原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)により成立の認められる甲第一七号証の一、二によれば、森本義行外一名に対して昭和四六年八月一〇日一〇七万円を支払いまた林栄司に対し同日二〇三万円を支払った者は明宝広告であって原告会社ではないことが認められる。前掲甲第三六号証及び原告会社代表者の本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各採用証拠に照らして措信できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(3)  同表4について

前掲甲第三六号証(一部)、原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)とこれにより成立の認められる甲第一八号証の一ないし三、控訴審証人川元幸雄の証言によれば、原告会社は、明宝広告から依頼された業務の一部を株式会社大誠に下請させ、これに対し右下請業務遂行のための資金として昭和四八年六月二一日一〇〇万円、同年一〇月一三日二二〇万円、同年同月二二日三三〇万円をそれぞれ交付したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。しかし、本件全証拠によるも、右各支払金が係争年度の前記各収益に対応する費用として支出されたことも、また、右各金員支払義務が係争年度中に確定したことも認めるに足りない。

してみれば、右各支払金は仕入原価ないし費用として原告会社の係争年度の損金に計上することはできないというべきである。

(4)  同表5について

前掲甲第三六号証(一部)、原告会社代表者の本人尋問の結果(一部)によれば、原告会社主張の支払金四〇〇万円は、明宝広告が直接林栄司所有の土地を買収することになった際、明宝広告から右土地につき売買予約に基づく所有権移転請求権仮登記を経由していた足立万治郎に対し右仮登記抹消の代償として支払われたものであって、原告会社が支払ったものではないことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(5)  同表6について

原告会社代表者の本人尋問の結果とこれにより成立の認められる甲第一八号証の四によれば、原告会社は昭和五〇年一二月一二日森本万二郎に対し『工事補償費』として五〇万円を支払ったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。しかし、本件全証拠によるも、右金員が係争年度の前記各収益に対応する費用として支払われたことも、また、右金員支払義務が係争年度中に確定したことも認めるに足りない。

してみれば、右支払金は仕入原価ないし費用として原告会社の係争年度の損金に計上することはできないといわなければならない。

(6)  同表7、8、9について

原告会社主張の同表7、8、9の各支払金に関する事実は、同表7の支払金の支払年月日の点を除いて当事者間に争いがなく、成立に争いがない甲第九号証の一二の五によれば右支払年月日の点は昭和四七年七月一八日であると認められる。そして、本件全証拠によるも、同表7、8、9の各支払金についての支払義務が右各支払年月日より前に確定したことを認めるに足りる証拠はない。

してみれば、同表7及び9の各支払金はいずれも第三期の費用として、また、同表8の支払金は第二期の費用としていずれも右各期の損金に計上すべきである(なお、弁論の全趣旨によれば、被告は同表8の支払金を別表(二)の<6>の『支払手数料二〇〇万円』として、また、同表7、9の各支払金を別表(三)の<8>の『支払手数料六二五万九、六二〇円』の内金としてそれぞれ計上していることが認められる。」

14  同枚目裏六行目の「したがって」の前に「但し、第二期の欄の合計六億一、九五一万四、八六〇円に前記7記載の二六五万円及び三〇〇万円並びに右8記載の三〇〇万円を加える。」を、同行目の「<4>」の後に「(但し、これに八六五万円を加える。)」をそれぞれ加える。同五行目の「<1>」及び同六行目の「<6>」の後に、それぞれ「の各被告主張欄」を加える。

15  原判決二二枚目表三行目の「旨の」の後に「前掲甲第三六号証及び」を加える。

16  同枚目表一三行目及び同裏六行目の「係争年度末」をいずれも「第二期の期末並びに第三期の期首及び期末」と改める。

17  原判決二三枚目表九行目の「同第七号証の」の後に「六、」を、同一二行目の「但し、」の後に「昭和四七年八月二一日九四七円の番号欄に四四〇八とあるのは二〇四三三〇であり、」を、同一三行目の「であり、」の後に「昭和四七年八月一八日四九万四、八〇五円とあるのは同年同月三一日であり、」を、同裏一二行目の「<13>」の後に「(被告主張額)」をそれぞれ加える。

18  同二四枚目表五、六行目の「に記載のとおり四、六二二万〇、七〇八円」を「の被告主張額欄に記載の四、六二二万〇、七〇八円から前記(二)の9記載の八六五万円を減じた三、七五七万〇、七〇八円」と改める。同七行目の「別表(三)」の後に「の被告主張額欄」を加える。

二  よって、右と結論を同じくする原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山忍 裁判官 河田貢 裁判官 松尾政行)

土地売買一覧表

No.1

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支払手数料、経費一覧表

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